住宅の洋風化による座敷や床の間への影響【長押と小壁】
木の店さんもく、店主の近江です。ご覧いただきありがとうございます。
木の店さんもくは一枚板を専門に扱っているお店なのですが、先代の頃はもちろんのこと、私の代になった現在でも日本住宅、いわゆる和風住宅に使われる床の間(とこのま)の床柱(とこばしら)や和室の材料「銘木(めいぼく)」と言われるものを扱っております。
以前よりだいぶ数は少なくなったとは言え、床の間材や床柱が使われることはなくなってはいないので、声がかかることもあります。
そのような中で、ここ20~30年の洋風化が進む中での和風建築と床の間について自分なりに考察してみました。
かなり偏った考えと思われるところもあるかもしれません。
この記事をご覧のみなさんが新築やリフォームで和室や床の間を考える機会があった際の参考になればと思います。
その際は私一人だけの意見ではなく、私と同じような和風建材を扱う銘木店や材木店、建築業者などいろんな方の考えもあわせて聞いてみるといいかもしれません。
大空間のLDKができたことで昔と変わったこと
暖房設備や住宅の断熱性や気密性の進化向上によってLDKが大空間になり、薪ストーブなどでさらに大空間を楽しみ、温かいお部屋で暮らすことができるようになりました。
天井も高く二階まで吹き抜けのリビングなどを見ることも珍しいことではなくなってきました。
大空間になることでサッシやドアなども昔に比べると高くなりました。
サッシや出入り口も高くなったことで座敷が変わったこと
サッシが高くなり、その高さを受け座敷の襖(ふすま)も以前の5尺8寸(176㎝)から2mの高さが標準のサイズになっています。
そのサイズを受けて座敷の天井高さだけでなく長押(なげし)の高さが決まってくるのですが、サッシや出入り口の高さが以前よりも高くなったことによって、座敷に使われる長押の高さが高くなりさらに、そのことによって床の間に使われる落し掛け(おとしがけ)の高さが高くなる現象が起こっています。
床の間の懐(ふところ)
私が住む岩手県や宮城県、もしかしたら東北、東日本まで含まれるかもしれませんが、床の間の落し掛けの高さ決定は大工さんの考えによるところが大きいと考えます。
大工さんに聞いた時の話によると、落し掛けの高さは長押を取り付けた高さから長押の枚数分高くするといいます。
長押の枚数分というのは4寸(120㎜)長押の場合、長押2枚分といえば長押の高さが4寸(120㎜)の場合、4寸×2枚=8寸(240㎜)、地域等によって長押と落し掛けまでの高さは長押1枚半分、長押2枚分といった具合に地域や施工する大工さんによって決まってくるようです。
そこで問題になるのが最近の住宅(戦後の住宅も含む)ではサッシの高さと障子の高さが同じ場合がおおく、その際は障子高さが2mほどになります。
長押は鴨居のすぐ上に取り付けられるので、サッシや襖の高さによってそのまま長押の高さが押し上げられます。
その結果どういうことになるかというと
床の間の小壁(下がり壁)が狭くなる現象が起きます。
下の画像は長押から長押2枚分ほどの高さに取り付けられた落し掛けです。
小壁(下がり壁)の重要性
私見になりますが、床の間は小壁(下がり壁)が広くとられることで、懐が深くなります。
そして床の間の奥には掛け軸が掛けられます。
掛け軸の風帯(ふうたい)が見え隠れするあたりに落し掛けが位置する。
そのようなところで趣(おもむき)が出てくるように思います。
昔(戦前)の床の間は天井がとても高く、4mほどもあるような高さの天井の座敷もあります。
下の画像は戦前に建築された民家、いわゆる古民家と言われる住宅の床の間座敷です。
こちらの床の間座敷では、床の間の落とし掛けから天井までの小壁がとても広くなっています。
落とし掛けから天井まで1m、中にはそれ以上、6尺(180㎝)ほども小壁がある床の間もあったりします。
こちらの床の間は落とし掛けから天井までおよそ3尺(90㎝)ほど小壁があります。
長押を省略する和室もありでは?
小壁の面積が天井から落とし掛けまで1尺3寸(39㎝)以上あると小壁の存在感がでてくると考えます。
そのことに頭を悩ませる大工さんもいるようで、高さの制約と先人に教えを受けてきた「しきたり」的な施工法とのはざまで、どのようにしたらよいのかという言葉も聞いたことがあります。
今の住宅様式の中で昔ながらの雰囲気を保つ和室空間を造ろうとする場合、小壁(下がり壁)を広くとることは有効で効果的な手法だと考えます。
小壁を広くとる方法としては
・巾の狭い長押を狭くする
・長押を使わない
ことが、方法として考えられます。
長押は書院造りの象徴的なアイテムのひとつになるので、部屋の格式を保ちたい場合やデザイン的なところで必要とされる場合は、長押の巾を狭くしてみるのも一つの方法です。
4寸角(120㎜)の柱に対して4寸長押を使うことが多いようです。
特に地元の岩手県南では多いように思いますが、4寸角に対して3寸3分(100㎜)巾の長押巾は決して否定されるものではないと考えます。
長押を使わないことで書院造りから対極の数寄屋茶室のような空間もありえます。
現代の住宅にはこちらのほうがかえってしっくりスマートな和室空間に見えるような気さえします。
下の画像は長押が省略された茶室 天井高も2m20㎝ほどです。
今回のブログはあくまで私の考えであって床の間の造り方はこうである、といったものではありません。
長押と落し掛けの関係からみる小壁の重要性を書いてみましたが、住宅の洋風化が進めば進むほど、和室空間を造る際に天井の高さや障子・襖などの建具の高さにこだわることが大切になってくるように思います。
LDKは大空間化により、天井高が高くなっている傾向があります。
その対比として和室の天井高をグッと下げることは、和室の和室感をあげるひとつの方法になるのかなと思います。
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和室や床の間、和風住宅などに関することで、お悩みやご相談があれば、わたしの知り得る知識と経験のなかでお話しすることができます。
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和の空間【床の間事例】
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